其の18
百号にもなってしまったとは、まことに「目出鯛」ことであります。
退院1ヶ月となり、たまりにたまっていた歌の書く事もやっとおわり、
少しなにかしてはドテッとラッコのごとき姿にてねころんでいます。
昨夜は志保がおでんを上手に作ってくれました。
大根おいしいね。ちゃんと面取りなどしたりしてね。なかなかやるもんです。
作成意欲があるうちはつづけてね。
うばゆりの種子こぼしゆく北狐なれの山野はみちてありしか
争ひは知らず大地のふところに童女のしぐさ<ゆきやこんこん>
明日へいとしむ
石川ふたば
浮腫の手に秋桜の種子摘み採りぬ明日たしかなる茜に染みて
秋桜の種子てのひらに温く受けかそけき量を明日へいとしむ
電灯のかさに下りてゆれてゐし優曇華を不意に思ひ出したる
草蜉蝣の卵とわれらに教へたる水団の湯気の向うに父は
優曇華が咲くは不吉と母は忌む父は草蜉蝣の蘊蓄をのぶ
わが胸に抱きて久しき片羽の蝶に吹雪きてゐる山桜
わが胸に生れて飛びたつ片羽の蝶にてもあらむ桜にまぎるる
一日終へしも明日咲く花も静やかに木槿は夕べの唇をとづ
亜麻咲きてあの世とやらへ一歩近づく父蘇れ十粒の種子
山畑の陽の射す辺り蒔きし亜麻の種子十粒のために見に行く
新墾第12選歌集「天弓」より